石原さとみ主演のドラマ『校閲ガール』によって、「校正」や「校閲」が一般の方にも広く認知されるようになりました。当記事では、似たような言葉ですが、意味や役割が大きく異なる「校正」「校閲」について詳しく解説していきます。
自分で校正・校閲を実施する時のコツも公開していますので、ぜひ最後までご覧ください。正しく理解することで、表現や表記ミスによるトラブルを防ぎながら、著者(コンテンツ)への信頼度を高めることにつながります。
目次
校正・校閲とはなにか
校正は、誤字脱字といった文字の誤りを正す行為を指します。誤植や体裁の誤りを正すことにも使われる言葉です。各媒体やメディアで決められた表記ルールを遵守できるいるかといったチェックを行うことも含まれます。
校閲は、文章や原稿を読み、内容や表現、事実関係などの誤りがないかを確かめる行為を指します。企業名などの固有名詞、歴史的事実、人名、数値データがよく確認されます。正しくない情報はメディアの信用を失うばかりか、訴訟など大きな問題にも発展しかねないため、非常に重要なプロセスといえるでしょう。
校正・校閲の具体例を徹底解説
誤字脱字や表記の揺れがなく、事実に基づいて書かれた原稿は読みやすく説得力があります。原稿制作において、「ゴールキーパー」などと表現されることもある校正・校閲業務には、文章力や国語力はもちろんのこと、幅広い教養や法令の知識も重要になる頭脳労働といえます。
それでは実際に校正校閲の修正例をいくつかみていきましょう。
【校正の参考例】
- あきらかな誤字訂正
誤:「今日は熱い」→正:「今日は暑い」
謝:「素適な女性ですね」→正:「素敵な女性ですね」
- 表記統一
「フェイスブック」「FB」「FaceBook」文章内での表記をいずれか1つに統一します。
- 漢字と平仮名、送り仮名の統一
「明らかに」「あきらかに」「売上」「売り上げ」
表記の統一と同様、いずれかに統一します。
その他数字の半角/全角を統一する作業等も校正における代表的な作業となります。
【校閲の参考例】
- 数字データ・ファクトチェック
「●●の調査では25%の女性が」と書かれている文章の場合、引用した調査データが事実といえるのかをチェックします。最大級表示も注意が必要です。「日本で唯一」「世界初の」といった謳い文句は使いたくなるシーンが多いかと思いますが、本来は客観的な裏付け資料の確認が必須であり、裏付けが難しい場合は「日本で最大級クラス」などの表記に変更をかけます。
- 差別語・不快語のチェック
差別語や不快語とは、特定の属性を持つ人々に対する否定的差別を意図して使われる表現を指します。読者が「差別表現だ」と感じる可能性があるか否かが判断軸になるため、慎重なケアが必要です。
- 固有名詞の表記確認
人名や土地名はもちろんのこと、日付や単位の間違いにも注意が必要です。また、それらの固有名詞は、気づかずに情報が更新されているケースが存在します。「1192(いい国)作ろう鎌倉幕府」というフレーズは馴染みがある方も多いのではないでしょうか。実は最新の教科書では1185年に鎌倉幕府の設立年が変わっています。
専門家として刊行した書籍で、信頼度を落とす結果にも繋がりかねません。最新の注意を払って、間違いがないようにしましょう。
その他、商標のチェックや歴史的事象の正誤確認も校閲における代表的な作業といえます。
校正・校閲が甘いときに生じるトラブル例
これまで、校正・校閲について詳しく解説してきました。では、校正・校閲を怠るとどんなトラブルに見舞われるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
トラブル事例:健康や美容に関する記事で、事実無根の内容が含まれていたケース
医療系記事のキュレーションメディアが社会から糾弾されたニュースは覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。体の不調や異常を感じたときに多くの方はインターネットで思い当たる症状に関する情報を集めます。
誰でも情報をアップロードできるため、インターネットに漂う情報は医師の手によって書かれた信頼できる情報から、外注ライターが代筆した信憑性に欠ける情報までさまざまです。
ある健康法が「アレルギーに効果的」と書籍で紹介され、それが事実と相反する内容であるとしましょう。読者が謝情報を鵜呑みにした結果、健康を害すれば取り返しがつきません。実際に訴訟まで発展するケースが複数存在しています。
・原稿内容が、事実に基づいたものであるのか
・引用情報であれば、具体的に何をどこから引用したのか
これらを十分に調べて原稿内に明記することで前述のリスクを限りなくゼロに近づけることが可能です。
校正・校閲を自分でやるときのコツ
では具体的に校正・校閲を行うには何を意識すれば良いのでしょうか。ここでは、プロの編集者が実践で使っている方法をお伝えします。この方法を駆使すれば、校正・校閲にかかる作業時間を半分、あるいは5分の1以下におさえることが可能になるはずです。
コツ1:校正→校閲の順序を守る
仕事で文章を書く機会が多い人なら、誤字脱字の確認後にあらためて内容を確認したところ大幅な構成手直しが必要なった・・という経験があるのではないでしょうか。
これは大幅な時間ロスです。せっかく修正した箇所が削除されるのであれば、その時間は無駄になってしまいます。
文章が完成したら、印刷して読み直す・別のツールにコピペをしてフレッシュな状態で読み直すことからはじめてください。そして原稿内容が固まったタイミングで、校正作業を開始してください。また、校閲については書籍や記事の前提を変えるような内容は執筆前段階で確認を完了することを意識してください。
例えば、「日本人の平均寿命が伸び続けている」ことを受けて、「老後のマネープラン」に関する本を税理士の方が出したいとします。
・日本人の平均寿命が本当に伸び続けているのか
といった点は本の根幹に関わる要素であるため、執筆前段階で必ず事実関係を確認するようにしてください。(わかりやすい例を出していますが、少し複雑になるとここを見落とす方が本当に多いです・・)
・日本人の平均寿命が75歳から82歳まで伸長している
といった記載を原稿内にいれるとしましょう。この場合82歳ではなく83歳が正しい情報であっても、本の根幹には大きく影響しません。数字を訂正すれば済む話しですね。こちらの事実関係は、一番最後のステップで行いましょう。
校正→校閲という順序を守っていただくことで、手戻りや余分な確認が格段に減少しますのでぜひ実践してみてください。
コツ2:章の構成ごとに切り分けて進める
一度にすべての項目をまとめてチェックしようとする人が多いかと思います。一見効率的に見えるやり方ですが、実は作業効率がとても悪いばかりか、ミスを防げないリスクがある進め方といえるでしょう。
人間の脳は複数の事象に集中することには向いていないため、見落としや1つの確認にかかる処理スピードが落ちてしまうからです。
ですので、校正・校閲を行うときは、書籍や記事の章ごとに切り分けて進めることを心がけてください。プリントアウトして手元でボールペンを持ちながら進めることを編集者は今でも大切にしています。
さらにいうと、複数の章の確認がおわったタイミングで、2-3章まとめて読み返しながら改めて確認をするステップをいれてください。この一手間が結果的に校正・校閲作業の全体効率を高めてくれるのです。
コツ3:誤字脱字や表記統一、事実確認は一番最後に行う
コツ①でも少し触れましたが、誤字脱字や表記の統一、細かな事実関係の確認は一番最後のステップで取り扱いましょう。また、このステップで確認する内容は実はパターンが概ね決まっています。
- 人名
- 土地名
- 会社名、部署名、役職名
- 郵便番号、住所
- HPアドレス、メールアドレス
- 電話番号、FAX番号
- 商品情報、品番
- 価格
これらが代表的な確認チェック項目です。原稿内にあるすべての文字を確認しようとすると抜け漏れが発生する可能性が高いため、上記項目を確認しようという意識を持ちながら原稿に向き合ってみてください。
校正・校閲に使える便利ツールのご紹介
これまで、校正・校閲を徹底解説しながら、ご自身で進めるときに意識したいポイントやコツについて徹底的に解説してきました。
ここでは、とても重要ではあるが手間もかかる校正・校閲に使える便利ツールをご紹介いたします。
無料で使える校正ツール「Enno」
文章校正支援ツール「JustRight」
https://www.justsystems.com/jp/products/justright/
便利ツールはあくまであなたの作業時間を削減する補助的な扱いとなります。BizPENでは、プロの編集者があなたの書籍作りを校正・校閲を含む全行程でサポートいたします。良ければぜひご検討ください。